Netflix『ナイブズ・アウト3』ネタバレ感想・考察!面白い?結末と犯人の正体・キャストあらすじ解説【ウェイク・アップ・デッドマン】
こんにちは!YOSHIKIです!
ついに、この男が帰ってきました。
世界一スタイリッシュで、世界一クセが強い名探偵。
そう、ブノワ・ブランです!!
2025年12月12日。
Netflixが全世界に放つ、今年最大のミステリーイベント。
シリーズ第3弾『ナイブズ・アウト:ウェイク・アップ・デッドマン』が、いよいよ配信スタートです!
正直に言います。
僕は予告編を見た瞬間、鳥肌が止まりませんでした。
前作『グラス・オニオン』の陽気なリゾートアイランドから一転。
今度の舞台は、雪に閉ざされた不気味な教会…。
画面から漂う「ゴシック・ホラー」な雰囲気が、もうたまりません!
監督は、現代ミステリーの金字塔を打ち立て続ける天才、ライアン・ジョンソン。
彼が今回挑むのは、「密室殺人」にして「信仰と論理」の対立。
神の奇跡か? それとも人間のトリックか?
あのブノワ・ブランが、初めて「理解不能」な恐怖に直面するなんて…。
そして、キャストがまたしても「異常」な豪華さです。
ダニエル・クレイグはもちろん、ジョシュ・ブローリンにグレン・クローズ、さらにはあのアベンジャーズ俳優まで!?
これはもう、演技の格闘技大会です。
この冬、僕たちはコタツに入りながら、世界最高峰の謎解きに挑むことになります。
準備はいいですか?
脳みそをフル回転させる時間は、もうすぐそこまで来ています!
【このブログの楽しみ方について】
🟡『ナイブズ・アウト:ウェイク・アップ・デッドマン』基本情報!

あのブノワ・ブランが長髪に!?
ビジュアルからして既にただ事じゃない雰囲気が漂ってます。
シリーズ最長の144分、トイレ休憩なしの没入体験になりそう!
| 項目 | 詳細 |
| タイトル | 『ナイブズ・アウト:ウェイク・アップ・デッドマン』 (原題:Wake Up Dead Man: A Knives Out Mystery) |
| 監督・脚本 | ライアン・ジョンソン (『ナイブズ・アウト』シリーズ、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』) |
| キャスト | ダニエル・クレイグ(ブノワ・ブラン) ジョシュ・オコナー(ジュド神父) ジョシュ・ブローリン(ウィックス司教) ジェレミー・レナー(ナット・シャープ医師) グレン・クローズ(マーサ) 他 |
| 上映時間 | 144分(2時間24分) |
| 配信開始日 | 2025年12月12日(金) Netflix独占配信 ※17:00〜配信開始 |
🔵公式予告編
🟡【ネタバレなし】公開前に知るべき!本作がヤバい3つの理由!
①「神」vs「論理」?シリーズ最大のタブーに挑む!
前作『グラス・オニオン』はIT長者の虚栄心を笑い飛ばす痛快作でしたが、今回は空気が一変しています。
テーマはずばり、「信仰」と「論理」の対決。
不可能犯罪(密室)が起きた時、人はそれを「トリック」と呼ぶか、それとも「奇跡」と呼ぶか?
監督のライアン・ジョンソンは、自身のルーツでもある宗教的テーマを、ミステリーの枠組みにぶち込みました。
徹底した論理の信奉者である名探偵ブランが、「神の仕業」としか思えない事件を前にして動揺する…。
こんなブラン、見たことありません!
U2の曲名でもあるタイトル『Wake Up Dead Man(死者よ、目覚めよ)』が示す通り、もし本当に死者が蘇ったとしたら?
ミステリーとしての「フェアプレイ」と、信仰という「アンタッチャブル」な領域のせめぎ合い。
このスリルは、過去2作とは次元が違います!
②キャストが豪華すぎて画面が割れる説
「オールスターキャスト」という言葉も、この作品の前では安っぽく聞こえます。
今回の容疑者リスト、見てください。
『アベンジャーズ』のサノスことジョシュ・ブローリンが威圧感たっぷりの司教を演じ、大女優グレン・クローズがその秘書として睨みをきかせる。
若手実力派筆頭のジョシュ・オコナーが物語の鍵を握る神父を演じ、さらには前作で「ホットソース」ネタとして名前だけ出ていたジェレミー・レナーがついに実写で登場!
これはライアン・ジョンソン監督による、俳優たちの「異種格闘技戦」です。
ベテラン勢の重厚な演技と、若手勢の繊細な演技がバチバチに火花を散らす。
誰が犯人でもおかしくないし、誰が死んでもおかしくない(笑)。
特に、ダニエル・クレイグ演じるブランとの「会話劇」は、アクション映画以上のアドレナリンが出ること間違いなしです!
③監督の「本気(ガチ)」モード!「カー・ルネサンス」とは?
ミステリーファンなら、この言葉に震えるはず。
ライアン・ジョンソン監督は、本作で「カー・ルネサンス」を掲げています。
これは、「密室の王者」ジョン・ディクスン・カーへのオマージュであり、古典的な「不可能犯罪」への原点回帰宣言です。
現代のテクノロジーやスマホを使ったトリックではなく、あくまで古典的で、それでいて誰も見たことがないような物理トリックへの挑戦。
冬のニューヨーク州北部、雪に閉ざされた教会という舞台設定も、ゴシック・ホラーな雰囲気を最高潮に高めています。
「犯人は誰か?」だけでなく、「どうやって殺したのか?」そして「なぜ、そんな不可能な方法を選んだのか?」。
監督が「キャリアで最も脚本執筆に苦労した」と語るほどの、超難解なパズル。
YOSHIKIと一緒に、この迷宮に挑みましょう!
🟡『ナイブズ・アウト:ウェイク・アップ・デッドマン』キャストとあらすじ!

長髪&トレンチコートのブランが渋すぎる!
そして容疑者たちが全員怪しい(笑)。
特に注目の若手ジョシュ・オコナーと大ベテランたちの演技合戦は見逃せません!
南部訛りが特徴の、世界で最も有名な私立探偵。
今回はこれまでのリゾートスタイルを封印し、長髪に帽子、トレンチコートというハードボイルドな出で立ち。
不可解な「奇跡」を前に、かつてない動揺を見せる。
物語の実質的な主人公とも言える若き神父。
元ボクサーという異色の経歴を持ち、過去の過ちで左遷された。
司教と対立していたため、第一容疑者となってしまう。
教区を支配する権威的で独善的な司教。
カリスマ性で信者を操る一方、多くの敵を作っていた。
今回の「被害者」となる可能性が極めて高い重要人物。
教会の忠実な秘書であり、司教の右腕。
教区のあらゆる内情に通じており、敬虔さと狂信の境界線にいる不気味な存在。
地元の医師。
前作『グラス・オニオン』で名前だけ登場した「ホットソース」の彼がついに登場!
ファンの期待を一身に背負うメタ的なキャラクター。
『ナイブズ・アウト:ウェイク・アップ・デッドマン』【あらすじ】
雪に閉ざされたニューヨーク州北部の田舎町にある「絶えざる不屈の聖母教会」。
寒々とした冬の景色の中、教区を支配するウィックス司教(ジョシュ・ブローリン)が不可解な死を遂げる。
現場は完全な密室であり、物理的に犯行が不可能な状況だった。
さらに、遺体の状況には宗教的な儀式を思わせる「奇跡」のような痕跡が残されていた。第一発見者であり、直前に司教と対立していたジュド神父(ジョシュ・オコナー)に疑いの目が向けられる中、名探偵ブノワ・ブラン(ダニエル・クレイグ)が捜査に乗り出す。
教会の秘書、弁護士、野心的な政治家、そして医師。
閉鎖的なコミュニティの住人たちは全員が何かを隠しており、それぞれの信仰と欲望が複雑に絡み合っていく。これは神の御業か、悪魔の仕業か、それとも人間の手によるトリックか?
論理の迷宮に迷い込んだブランは、シリーズ最大の「不可能犯罪」に挑むことになる――。
🔴『ナイブズ・アウト:ウェイク・アップ・デッドマン』【ネタバレなし感想】
観終わった後の第一声は、「なるほど、そう来たか」でした。
結論から言うと、これはシリーズのファンでも「意見が分かれる意欲作」です。
正直に言います。
前作までの「お祭り騒ぎ」のような派手さや、スカッとする爽快感を期待すると、少し肩透かしを食らうかもしれません。
僕自身、「あれ? いつものブノワ・ブランと違うぞ?」と最初は戸惑いました。
でも、物語が進むにつれて、その「静かなる熱量」にじわじわと引き込まれていきました。
今回の舞台は、凍てつくような冬の教会。
スクリーンに映し出されるのは、モノクロームに近い冷たく美しい世界。
これまでの「ポップな謎解き」から一転、じっくりと人間ドラマを見せる「ゴシック・ミステリー」へと変貌を遂げています。
「最高傑作!」と手放しで絶賛するタイプではありませんが、「映画としての質」は間違いなく高いです。
監督が安易なヒットの法則に頼らず、あえてシリアスな方向に舵を切った挑戦心は評価に値します。
U2の曲名でもある「Wake Up Dead Man」というタイトル。
その意味を噛みしめながら、静かに謎を追う時間は、派手さはないものの、とても贅沢な映画体験でした。
💡ここがポイント!
●ジョシュ・オコナーの好演:若き神父役の彼が、物語の良いアクセントになっています。彼の誠実な演技が、少し重たい空気を中和してくれています。
●映像の美しさ:冬の教会の張り詰めた空気感が、画面越しに伝わってきます。派手なCGアクションなどはありませんが、光と影の使い方がとても綺麗です。
●意外とスッキリした後味:テーマは「死」や「信仰」と重めですが、観終わった後の余韻は意外とサッパリしています。エンタメとして綺麗にまとまっているので、気負わずに観られます。
「大爆笑したい」「スカッとしたい」という気分の時よりは、
「コーヒーでも飲みながら、じっくり質の高いドラマに浸りたい」
そんな気分の夜にオススメしたい、大人の良作です。
🔵『ナイブズ・アウト:ウェイク・アップ・デッドマン』各項目別10点満点評価とレビュー
| ストーリー 8/10 | 意欲的な方向転換。 前作までのファンは少し戸惑うかもしれないが、ミステリーとしての骨格はしっかりしている。爆発的な面白さというより、じわじわと味がしみてくる脚本。 |
|---|---|
| 映像 8/10 | 冬の美しさが際立つ。 派手さはないが、独特の冷たい空気感や教会の陰影が綺麗に撮れている。特定のムードで統一されており、作品のテーマによく合っている。 |
| 余韻 6/10 | 意外と後味はスッキリ。 テーマは重厚だが、観終わった後の感情的なしこりはなく、気持ちよく見終われる。深く考え込むというよりは、一つの物語として完結した満足感がある。 |
| リピート 7/10 | ディテールの確認にはアリ。 一度見れば話の大筋は理解できるが、伏線や演技の細かい部分を確認するために見返すのは楽しい。何度も熱狂して見るタイプではないが、質は高い。 |
| キャスト 8/10 | 実力派のアンサンブル。 ジョシュ・オコナーをはじめ、キャスト全員が役にハマっていて引き込まれる。感情移入しすぎるほどではないが、それぞれのキャラクターに人間味がある。 |
| 総合 7.4/10 | 良質な大人のエンタメ。前作のノリを期待すると少し違うが、一つの映画として丁寧に作られている。落ち着いてミステリーを楽しみたい人にはオススメの良作。 |
🔴『ナイブズ・アウト:ウェイク・アップ・デッドマン』【ネタバレあらすじ結末解説】
犯人、トリック、そして衝撃の結末まで、物語の核心を全て記述します。
これから視聴する方は、絶対にスクロールしないでください!
「犯人を知ってから見ても面白い」なんてことは、この映画に限ってはありません!
①事件の発端:ウィックス司祭の死と「9秒間」
チムニー・ロックの教会に赴任した元ボクサーの神父・ジャドは、信者を支配するウィックス司祭と対立していた。
ある夜、ジャドはウィックスに暴力を振るわれ、衝動的に酒場の「狼の頭」の飾りを教会に投げつける。
翌日、説教を終えたウィックスが控室で倒れているのが発見された。
背中には狼の頭がついたナイフが刺さっていた。
第一発見者はジャド。
彼が遺体を見つけ、助けを呼びに行って戻るまでの「9秒間」だけが犯行可能な空白の時間だった。
現場にジャドが投げた飾りと同じ意匠の凶器があったことから、彼は最有力容疑者となる。
②捜査:ブノワ・ブランの登場と新たな証拠
名探偵ブノワ・ブランが現れ、ジャドの無実を証明するために捜査を開始する。
現場検証の結果、床に「赤い糸」が落ちており、ジャドがウィックスの飲酒癖を隠すためにとっさにフラスコを隠していたことが判明する。
一方、町の後援者たちの集会映像から、ウィックスが弁護士サイの実父であること、そしてウィックスが教会を閉鎖しようとしていた事実が浮かび上がる。
後援者たちにはそれぞれウィックスを殺害する動機があった。
③展開:霊廟の怪異と連続殺人
疑惑を晴らすため、ジャドは教会の創設者プレンティスの霊廟を調べるが、そこで中から出てくる「幽霊」のような人影を目撃し、気絶する。
目を覚ますと、そばには管理人のサムソンが鎌で殺されていた。
さらに、捜査線上に浮上した医師のナットの自宅へ向かうと、地下室で酸に浸され白骨化したナットの遺体が発見される。
遺留品から、ナットが強力な鎮静剤を所持していたことが判明する。
④真相:マーサの告白と宝石「イブのりんご」
事件の全貌を語ったのは、教会の事務を担うマーサだった。
彼女は60年間、創設者が飲み込んだ伝説の宝石「イブのりんご」の秘密を守り続けていたが、ウィックスがそれを奪おうとしていることを知る。
マーサは宝石を守るため、ナット医師とサムソンを協力者として計画を立てた。
当初の計画では、ウィックスを鎮静剤で眠らせるだけの予定だったが、宝石に目がくらんだナットが裏切る。
ナットは眠っているウィックスを本物のナイフで刺殺し、さらに宝石を持ち出したサムソンをも殺害したのだった。
⑤結末:毒入りコーヒーと最後の封印
マーサはサムソンの死を知り、ナットへの復讐を決行する。
ナットの家を訪れた彼女は、隙を見て毒入りコーヒーのカップをすり替え、ナットを毒殺した。
すべての真相をジャドとブランに告白した後、マーサもまた隠し持っていた毒で自ら命を絶つ。
彼女の手からこぼれ落ちたのは、赤い宝石「イブのりんご」だった。
事件後、ジャドは修復したキリスト像の胸の中に宝石を隠し、その存在を永遠に封印した。
🔴『ナイブズ・アウト:ウェイク・アップ・デッドマン』ネタバレあり【深掘り考察】

犯人はまさかの「教会のおばさま」マーサでしたね…。
しかも、実行犯はあのナット医師!
「カップのすり替え」や「狼の頭」の伏線、皆さんは気づけましたか?
ここからは、YOSHIKIが気になったポイントを、徹底的に考察していきます!
🔵考察①:「9秒間の空白」が示す人間の心理的盲点
物語の最大の争点となった「9秒間」。
第一発見者であるジャドが遺体を見つけ、助けを呼びに行って戻ってくるまでの、ごくわずかな時間です。
一見すると、この短時間で犯行を行うのは物理的に不可能に思えます。
「だからジャドが犯人なんだ」と、劇中の人々も、そして私たち観客もミスリードされてしまいました。
しかし、ここにライアン・ジョンソン監督の巧妙な罠があります。
このトリックの本質は、物理的な時間の短さではなく、「思い込み」の利用にあります。
ジャドは自分が遺体を発見した時点で、ウィックスは「すでに死んでいる」と思い込んでいました。
だからこそ、戻ってきた時に遺体の状態が微妙に変わっていても(本物のナイフにすり替えられていても)、その違和感に気づけなかったのです。
さらに皮肉なのが、ジャドが「善意」で行った隠蔽工作です。
彼はウィックスの飲酒癖を隠すため、とっさにフラスコを隠しました。
この「優しさ」ゆえの行動が、結果的に彼のアリバイをなくし、犯人であるナット医師に付け入る隙を与えてしまったのです。
「地獄への道は善意で舗装されている」という言葉がありますが、まさにそれを地で行く展開。
「9秒間」という極限のシチュエーションで描かれたのは、単なる時間トリックではなく、人間の善意や思い込みがいかに脆く、真実を曇らせてしまうかという心理的な恐怖だったのではないでしょうか。
ナット医師が用意した凶器が、ジャドが酔って盗んだ「狼の頭」と同じデザインだったことも、ジャドの過去の「罪(暴力性)」を利用した悪意ある演出であり、犯人の狡猾さが際立っています。
🔵考察②:「イブのりんご」とキリストの胸の封印
タイトルの『Wake Up Dead Man』と同様に、物語の核心にある宝石「イブのりんご」にも、極めて重要な宗教的メタファーが込められています。
「イブのりんご」とは、旧約聖書における「知恵の実」であり、人類が犯した「原罪」の象徴です。
この宝石に関わった人間たちの末路を見てください。
飲み込んで死んだ創設者プレンティス。
それを暴いて奪おうとしたウィックス司祭。
そして、独占しようとして仲間を殺し、自らも滅んだナット医師。
彼らは皆、宝石という名の「欲望(罪)」に取り憑かれ、破滅の道を歩みました。
これは、物質的な富がいかに人の心を蝕み、信仰の道を誤らせるかという強烈な寓話です。
しかし、この映画が素晴らしいのは、その「救済」の描き方です。
ラストシーンで、ジャドはその呪われた宝石をどうしたか?
彼はそれを売り払うのでも、海に捨てるのでもなく、修復したキリスト像の胸の中に埋め込んだのです。
これは鳥肌が立つほど美しい演出です。
「原罪」の象徴であるリンゴが、「贖罪」の象徴であるキリストの体内に封印される。
つまり、人間のどうしようもない業や欲望も、最終的には信仰や神の愛によって包み込まれ、赦されるというメッセージです。
ジャド自身も、元ボクサーとしての暴力衝動や、ウィックスを憎んだ罪悪感に苦しんでいました。
彼が宝石を封印する行為は、彼自身の過去との決別であり、真の聖職者として生まれ変わるための儀式だったのだと僕は思います。
単なるお宝争奪戦で終わらせず、最後に神学的な「赦し」へと昇華させる手腕。
ライアン・ジョンソン、やはり只者ではありません。
🔵考察③:マーサの静かなる狂気と「カップのすり替え」
今回、最も観客の心を揺さぶったキャラクターは間違いなくマーサでしょう。
60年もの間、たった一人で教会の秘密を守り抜いてきた彼女。
彼女の動機は、金銭欲でも名誉欲でもなく、純粋に「教会を守りたい」という義務感でした。
しかし、その歪んだ愛は、いつしか狂気へと変わっていきました。
「組織を守るために、組織の長を殺す」。
この矛盾した行動こそが、彼女の悲劇の根源です。
そして、クライマックスで見せたナット医師との対決シーン。
ここで使われたトリックが、最新鋭のガジェットでも複雑な化学反応でもなく、「相手の目を見てカップをすり替える」という、手品のような超アナログな手法だったことに震えました。
これは、彼女が60年間、誰にも本心を悟られずに生きてきた「演技力」と「度胸」の集大成です。
欲に目がくらみ、早口でまくし立てるナット医師に対し、静かにお茶を勧めるマーサ。
この「静と動」のコントラストが、彼女の凄みをより一層際立たせていました。
一見、優しそうな老婦人が、実は誰よりも冷徹な覚悟を持っていた。
グレン・クローズの怪演もあり、映画史に残る「静かなる復讐」の名シーンになったと思います。
彼女もまた、愛する教会という「呪い」に囚われた犠牲者だったのかもしれません。
🔵考察④:歪んだ愛と「ファンダム」への強烈な皮肉
最後に、YOSHIKIが感じたもう一つの裏テーマについて語らせてください。
それは、「何かを愛しすぎることの危険性」です。
マーサは教会を愛していました。しかし、その愛は「変化を許さない」「秘密を死守する」という排他的な執着へと変貌し、結果として教会を血で汚してしまいました。
これ、今のネット社会やエンタメ業界にも通じる話だと思いませんか?
ライアン・ジョンソン監督といえば、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』で賛否両論を巻き起こしたことが記憶に新しいです。
一部の熱狂的なファン(ファンダム)から、「俺たちのスター・ウォーズを守れ!」という名目で激しいバッシングを受けました。
今回のマーサの姿は、まさにその「対象を守るためなら、攻撃も辞さない過激なファン(Toxic Fandom)」のメタファーに見えてなりません。
「純粋なものを守りたい」という正義感が、いつしか独善的な狂気になり、逆に愛するものを破壊してしまう。
監督は、このゴシック・ミステリーという枠組みを借りて、現代社会に蔓延する「歪んだ愛」や「不寛容さ」に対して、強烈なアイロニー(皮肉)を突きつけているのです。
「愛することは、支配することではない」。
ジャドが最後に選んだ「赦し」の道こそが、監督が提示した、この狂った世界に対する唯一の処方箋なのかもしれません。
🔴『ナイブズ・アウト:ウェイク・アップ・デッドマン』【完全版】まとめ!
●イブのりんご:欲望の象徴である宝石が、最後にキリストの胸(信仰)に抱かれる皮肉と救済。
●Wake Up:過去の罪や秘密に縛られていた人々が、死を通じて強制的に「目覚め」させられる物語。
いかがでしたでしょうか?
『ナイブズ・アウト:ウェイク・アップ・デッドマン』。
シリーズ第3作目にして、最も「哀しく」、最も「皮肉」に満ちた作品でした。
ブノワ・ブランの探偵譚は、どうやら第4作へと続くようです。
次はどんなジャンルを破壊してくれるのか、今から楽しみで仕方ありません!

最後まで読んでくれてありがとう!
あのカップのすり替えシーン、緊張感が凄かったですよね!(笑)
ぜひコメント欄で、あなたの推理や感想を聞かせてください!



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