映画『サブスタンス』ネタバレ考察・感想!ラストのモンストロとエンドロール後の意味は?モンスター・スー・フレッド・キャストまで完全解説【Prime Video】
こんにちは!YOSHIKIです!
みなさん、心の準備はできていますか?
今、映画界で最も「劇薬」と恐れられている作品がついに、Amazon Prime Videoに降臨してしまいました。
その名は、『サブスタンス』(原題:The Substance)!!
2024年のカンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞し、会場を悲鳴と拍手喝采の渦に巻き込んだ衝撃作。
主演は、あの大スター、デミ・ムーア。
彼女が自身のキャリア、そして「美しさ」への執着を全てさらけ出し、文字通り「身を削って」挑んだ、キャリア史上最狂のボディ・ホラーです。
「美しくなりたい」「若くありたい」
誰もが一度は抱くその願いが、この映画では「血まみれの悪夢」へと変わります。
日本での劇場公開時もR15+指定で話題になりましたが、配信なら誰にも気兼ねなく(あるいは部屋の隅で震えながら)目撃できますね。
【このブログの楽しみ方について】
🟡Prime Video映画『サブスタンス』基本情報!

監督は『REVENGE リベンジ』で鮮烈なデビューを果たしたコラリー・ファルジャ!
今回はその色彩感覚と暴力性をさらにパワーアップさせ、美に取り憑かれた社会に宣戦布告しています。
衣装や美術もハイセンスで、目が離せません!
| 項目 | 詳細 |
| タイトル | 『サブスタンス』 (原題:The Substance) |
| 監督・脚本 | コラリー・ファルジャ (『REVENGE リベンジ』) |
| キャスト | デミ・ムーア マーガレット・クアリー デニス・クエイド 他 |
| 上映時間 | 142分(圧巻の2時間22分!) |
| 配信・公開日 | 2025年5月16日(金) 劇場公開 2025年12月19日(金) Prime Video見放題独占配信 |
🔵公式予告編
🟡【ネタバレなし】公開前に知るべき!本作がヤバい3つの理由!
①デミ・ムーアの「血まみれの復活」!自分自身への復讐劇
本作のキャスティングは、完全に確信犯です。
主演は90年代に『ゴースト』などで一世を風靡し、世界最高のギャラを稼いでいたデミ・ムーア。
彼女が演じるのは、「50歳になり、若さが足りない」とクビを宣告される女優です。
これは彼女自身のキャリア、そしてハリウッドという残酷な業界への強烈な皮肉(メタファー)になっています。
さらにすごいのは、デミ・ムーアが全裸になり、老いや醜さをこれでもかと晒け出し、血まみれになって絶叫する演技を見せていること。
「綺麗に見られたい」という女優のエゴを捨て去り、怪物になることを選んだ彼女の覚悟。
それはもはや演技を超えた、ルッキズムに対する「復讐」です。
②ユニバーサルが逃げ出した!?「閲覧注意」のラスト20分
実はこの映画、当初はあの大手「ユニバーサル・ピクチャーズ」が配給する予定でした。
しかし、試写を見た幹部たちが真っ青になり、「この結末は過激すぎる!カットしろ!」と要求。
監督がそれを拒否したため、ユニバーサルは配給権を手放し、プロジェクトから逃げ出したという伝説を持っています。
そう、大手のスタジオが「これは見せられない」と匙を投げるほど、ラストの展開は常軌を逸しています。
スクリーンを埋め尽くす大量の血液、崩壊していく肉体、そして現れる「何か」。
観客の生理的嫌悪感を極限まで刺激する、映画史に残るカオス。
ポップコーンを食べる手が止まるどころか、箱を落とすレベルの衝撃が待っています!
③CG禁止!?2万リットルの血糊と特殊メイクの芸術
「最近の映画はCGばかりで味気ない」と思っているあなた。
『サブスタンス』は違います。
コラリー・ファルジャ監督は「オーガニックな恐怖」にこだわり、CGを最小限に抑え、シリコンやアニマトロニクス(ロボット)を駆使した物理的な特殊メイクで肉体の変容を描きました。
使用された血糊の量は、なんと21,000リットル!
皮膚が裂け、中から別の人間が出てくる描写の「生々しさ」は、デジタルでは絶対に出せない質感です。
アカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞した、職人たちの狂気じみた技術力。
「痛み」すら感じる映像体験に、あなたの感覚は麻痺するはずです。
🟡『サブスタンス』キャストとあらすじ!

50代の「オリジナル」と20代の「コピー」。
デミ・ムーアとマーガレット・クアリーが演じる「同一人物」のバトルは必見です。
そしてプロデューサー役のデニス・クエイドの「下劣さ」が本当に憎たらしい!(褒めてます)
かつてのアカデミー賞女優だが、現在はエアロビ番組のインストラクター。
50歳の誕生日に「賞味期限切れ」として番組を解雇され、絶望の中で再生医療に手を出す。
エリザベスのDNAから生まれた「より若く、より美しく、より完璧な」分身。
エリザベスの欲望を体現した存在だが、次第に本体であるエリザベスの時間を奪い始める。
視聴率と若さしか興味がない、下劣で強欲なTVプロデューサー。
エリザベスをゴミのように捨て、スーを貪るように消費する「業界の悪」の象徴。
『サブスタンス』【あらすじ】
かつてハリウッドのトップスターとして輝いていたエリザベス(デミ・ムーア)。
しかし、50歳の誕生日を迎えた日、彼女はTVプロデューサーから残酷な通告を受ける。
「君はもう若くない。番組は打ち切りだ」築き上げてきたキャリアを一瞬で否定され、深い自己嫌悪に陥った彼女のもとに、ある怪しげな通知が届く。
それは、「サブスタンス(THE SUBSTANCE)」と呼ばれる謎の再生医療への招待状だった。
「一度の注射で、DNAを共有する“より若く、より美しく、より完璧な”もう一人の自分を生み出せる」誘惑に負け、キットを使用したエリザベス。
すると、彼女の背中が裂け、そこから完璧な美貌を持つ20代の分身、スー(マーガレット・クアリー)が誕生する。
しかし、この夢のようなシステムには、絶対のルールがあった。「7日間ごとに入れ替わること」
「二人は一心同体であること」スーとして華やかな世界を再び謳歌し始めたエリザベス。
しかし、若さと成功の快楽に溺れたスーは、次第に「7日間」のルールを破り始め、眠っているエリザベスの肉体を侵食していく。
一つの精神を共有する二人の女。
それはやがて、血で血を洗う「自分自身との殺し合い」へと暴走していく――。
🔴Prime Video『サブスタンス』ネタバレなし感想
観終わった直後の、僕の第一声を聞いてください。
「映画館で見ればよかった……!!これ、とんでもない傑作です!」
正直に言います。
家で見て、めちゃくちゃ後悔してます。
震えが止まらないんです。
恐怖で?
いいえ、それだけじゃありません。
デミ・ムーアという一人の女優が、自分のキャリア、肉体、プライド、その全てを賭けてスクリーンに叩きつけた「執念」に圧倒されて、震えているんです。
まず、声を大にして言いたいのは、日本の宣伝の「かわいいが暴走」というキャッチコピーに絶対に騙されないでください!
これ、全然かわいくないです。
むしろ「地獄」です。
オシャレなPVみたいな映像だと思って観始めると、開始数十分で「えっ、こんなにエグいの?」と後悔し、ラスト20分では思考停止するほどの「血の洪水」に飲み込まれます。
でも、ただのグロテスクな映画ではありません。
この作品の恐ろしさは、描かれているテーマが「私たち全員の心の中にある病」だからです。
「若くありたい」「認められたい」「老いるのが怖い」。
そんな、誰もが隠しているドロドロとした欲望を、この映画は物理的な「痛み」として視覚化してきます。
特に、食事の咀嚼音や、針が刺さる音などの「ASMR的な音響演出」が本当にヤバい!
これは自宅のスピーカーやイヤホンではなく、劇場の爆音で浴びるべき「体験」でした。
今からでも遅くないので、もしどこかで再上映していたら絶対に駆けつけます(笑)。
僕個人の感想としては、「見る劇薬」です。
決して万人にはおすすめできません。
デートで観たら気まずくなること確定ですし、食事中に観るのは絶対にNG。
でも、「映画でしか味わえない衝撃」を求めている人、そして「自分を愛せない苦しみ」を知っている人には、一生忘れられない傑作になるはずです。
覚悟を決めて、デミ・ムーアの魂の叫びを目撃してください!
🔵『サブスタンス』各項目別10点満点評価とレビュー
| ストーリー 7/10 | 設定が秀逸で引き込まれる。 ルッキズムへの痛烈な風刺と、予測不能な展開は圧巻。ただ、後半少しだけテンポが落ちるのが惜しい!それでも十分に楽しめる良作です。 |
|---|---|
| 映像 8/10 | 独特な美しさが際立っている。 原色を使ったセットや構図がとにかくオシャレ。グロテスクな描写さえも、どこか美しく見えてくるから不思議です。こだわりを感じる映像美でした。 |
| 余韻 7/10 | 深く考えさせられる。 見終わった後、ルッキズムについて誰かと語り合いたくなりました。不快感はありますが、それ以上に「凄いものを見た」という心地よい疲労感が残ります。 |
| リピート率 4/10 | 一度見れば十分お腹いっぱい。 衝撃度は満点ですが、エネルギーを使うので何度も見るのはしんどいかも(笑)。一度の体験として楽しむのがベストな作品です。 |
| キャスト 8/10 | 迫真の演技に引き込まれた。 デミ・ムーアの体当たり演技には圧倒されました。マーガレット・クアリーとの対比も素晴らしく、二人の女優魂に拍手を送りたいです。 |
| 総合 6.8/10 | 不快指数はMAXですが、間違いなく「映画館(あるいは自宅の最大画面)」で体験すべき傑作。ルッキズム社会に中指を立てる、コラリー・ファルジャ監督のパンクな精神に痺れました。 |
🔴Prime Video『サブスタンス』ネタバレあらすじ結末解説
そんな方のために、衝撃のストーリーを時系列で詳しく整理しました。
考察を読んだ後にもう一度事実を振り返ると、また違った恐ろしさが見えてくるはずです。
①廃棄処分:エビの咀嚼音と消えたスポットライト
映画は、黒い背景の中で卵の黄身が細胞分裂する不気味な映像から幕を開けます。
そして映し出されるのは、ハリウッドの歩道にある「エリザベス・スパークル」の星。
最初はピカピカだった星が、雨に打たれ、泥に汚れ、最後には誰かがこぼしたケチャップで汚れていく……。
このたった数秒の映像が、主人公エリザベスの残酷な「賞味期限」を物語ります。
かつてオスカーを手にした大女優のエリザベスも、今は50歳。
エアロビ番組の女王として君臨していましたが、彼女の誕生日に待っていたのは、花束ではなく「解雇通知」でした。
プロデューサーのハーヴェイ(デニス・クエイド)は、昼食の席で汚らしくエビをむさぼり食いながら言い放ちます。
「君はもう若くない。視聴者は新しい肉を求めてるんだ」
エビの殻を噛み砕く「バリバリ」という不快な音が、エリザベスの心が折れる音と重なり、見ていて胸が悪くなるシーンです。
失意の底で交通事故を起こした彼女は、病院で謎の美青年看護師から一本のUSBメモリを渡されます。
そこには、悪魔の契約書とも言える誘い文句が記されていました。
「THE SUBSTANCE(サブスタンス)……より若く、より美しく、より完璧なあなたへ」
②脱皮:背骨から生まれる「究極の私」
「もう一度、愛されたい」
その一心で、エリザベスは闇ルートでキットを入手し、自宅の無機質なバスルームでそれを身体に打ち込みます。
すると、彼女の背中がメリメリと音を立てて裂け始めます。
まるで昆虫の脱皮のように、老いた皮膚の下からヌルリと這い出してきたのは……
神々しいほどに美しく、完璧な肉体を持つ20代の分身、スー(マーガレット・クアリー)でした。
スーはすぐにテレビ局へ向かい、ハーヴェイを瞬殺で魅了します。
「これだ!この輝きだ!」
ハーヴェイはスーの中にエリザベスの面影など微塵も感じず、ただ「若い肉体」として即採用。
こうしてエリザベスは、自分自身が生み出した分身に、自分の居場所を奪われることになります。
しかし、この魔法には破れば死ぬ「絶対のルール」がありました。
「7日ごとに必ず交代すること」
一方が光を浴びている間、もう一方は廃人のように眠り続け、脊髄液(安定剤)を供給し続けなければならないのです。
③侵食:腐り落ちる指と、老婆への変貌
最初のうちはルールを守っていた二人。
しかし、スーとして浴びる称賛、セックス、成功の快楽は、強烈な麻薬でした。
「あと少しだけ、このままでいたい」
スーは一晩の情事のために、交代時間を数時間遅らせてしまいます。
その代償は、即座に、そして残酷な形で現れました。
目覚めたエリザベスの人差し指が、まるでミイラのように黒く壊死していたのです。
「私の身体になにをしたの!?」
供給元に電話で抗議するエリザベスに対し、男は冷淡に告げます。
「お前たちは一つだ」
しかし、二人の意識は完全に決裂していました。
エリザベスは醜い自分を呪い、暴食に走り、引きこもります。
一方、スーはエリザベスを「私の時間を奪う寄生虫」として憎み始め、ルールを破る頻度をエスカレートさせていきます。
スーが輝けば輝くほど、エリザベスの生気は吸い尽くされ、急速に老化が進んでいく。
それは文字通り、自分が自分を食い殺す「共食い」の地獄でした。
④暴走:大晦日の怪物「モンストロ」誕生
運命の大晦日。
スーは世界中が注目する特番の司会に選ばれます。
このチャンスを逃したくない彼女は、なんと3ヶ月もの間、交代を拒否し続けました。
その結果、久しぶりに目覚めたエリザベスは、もはや人間とは呼べない腰の曲がった異形の老婆(ゴラムのような姿)になり果てていました。
「殺してやる……!」
絶望したエリザベスは「終了セット」を手にし、眠るスーを殺そうとします。
しかし、スーの寝顔——かつての自分の美しい顔——を見た瞬間、手が止まってしまいます。
「彼女を殺せば、私は誰からも見向きされなくなる」
自己愛と自己嫌悪の板挟みになり、泣き崩れるエリザベス。
その殺意に感づいたスーは激怒し、老婆となったエリザベスを情け容赦なく殴りつけ、鏡に叩きつけ、ついには撲殺してしまいます。
「自分自身」を殺してしまったスー。
しかし、本体(マトリックス)が死ねば、コピーも生きられません。
スーの身体は急速に崩壊を始め、歯が抜け、耳がボロリと落ちていきます。
パニックになったスーは、禁断の「活性化剤」を、あろうことか自分の身体に打ち込んでしまいます。
その結果生まれたのは、もはや「スー」でも「エリザベス」でもありませんでした。
二人の肉体が無秩序に融合し、背中に顔が埋まり、手足がねじれた、世にも醜悪なクリーチャー、「モンストロ・エリザスー」だったのです。
⑤血の祭典と、星への帰還
怪物と化したモンストロ。
それでも彼女の心には「愛されたい」という本能だけが残っていました。
彼女はドレスを無理やり着込み、崩れた顔にエリザベスの写真を貼り付け、テレビ局のステージへと向かいます。
観衆の前で「私よ、エリザベスよ!」と叫ぶモンストロ。
しかし、仮面が剥がれ落ちた瞬間、会場は悲鳴と怒号に包まれます。
「化け物だ!殺せ!」
人々から攻撃された彼女の身体から、突然、消防ホースのような勢いで大量の血が噴き出します。
それはまさに『キャリー』を超える、視界すべてを赤く染める血の洪水。
着飾ったセレブたちや、憎きハーヴェイを、真っ赤な鮮血が容赦なく飲み込んでいきます。
最後、逃げ出したモンストロは外で自壊し、肉片となって四散します。
その残骸から、エリザベスの顔だけを持つ肉塊が這い出し、ハリウッドの「自分の星」の上へ。
彼女は星の上で、幻覚の喝采を浴びながら微笑み、静かにドロドロの液体となって溶けていきました。
翌朝、清掃車がその赤いシミを淡々と洗い流し、世界は何事もなかったかのように動き出します。
そこに残ったのは、綺麗になった星と、誰にも顧みられない「名声の残骸」だけでした。
🔴『サブスタンス』ネタバレあり考察

みなさん、生きてますか?(笑)
ラストの「血の洪水」で思考停止した人も多いと思いますが、この映画、実は細部まで計算し尽くされた「芸術作品」なんです。
今回はリクエストにお応えして、徹底的に深掘りした「完全版」考察をお届けします。
これを読めば、あの悪夢のようなシーンの意味がすべて繋がるはず!
🔵考察①:「ひとつである」という呪いの正体
映画の中で執拗なまでに繰り返されたルール、「お前たちは一つだ」。
一見すると、「リソース(栄養)を共有しているから、お互いを大事にしなさい」という単純な警告に聞こえますよね。
しかし、この言葉の裏にはもっと恐ろしい、現代社会の病理が隠されています。
僕は、これは現代人が抱える「自己分裂」に対する強烈な皮肉だと感じました。
僕たちは、InstagramやTikTokで加工アプリを使い、「若くて美しい、キラキラした自分(スー)」を演じています。
「いいね!」をもらうたびに脳内でドーパミンが溢れ、「これが本当の私だ」と信じ込もうとする。
しかし、スマホの画面を消して鏡を見れば、そこには疲れて、老いていく「生身の自分(エリザベス)」がいるわけです。
エリザベスがスーを愛せば愛するほど、本体である自分自身を憎むようになる。
「若い私」を生かすために、「老いた私」のリソース(時間や自尊心)を切り売りして消費していく。
この映画のエリザベスとスーの関係は、SF的な設定でありながら、私たちが毎日スマホの中でやっている「精神的な共食い」を、グロテスクな肉体表現を使って物理的に可視化したものなのではないでしょうか。
だからこそ、あんなに現実離れした映像なのに、見ていて他人事とは思えない「痛み」が胸に刺さるのだと思います。
🔵考察②:なぜハーヴェイは最後まで生き残るのか?
これが一番ムカつく、そして納得いかないポイントですよね!(笑)
あんなに下劣で、女性をモノ扱いしてきたプロデューサーのハーヴェイ。
ラストの血の祭典で真っ赤に染まってはいましたが、彼は物理的なダメージをほとんど負わず、生き残りました。
普通のホラー映画なら、最後にモンスターに惨殺されて「あー、スッキリした!」となるのがお約束です。
僕たちも心のどこかで、彼が八つ裂きにされるカタルシスを期待していたはずです。
しかし、コラリー・ファルジャ監督は、あえてその期待を裏切りました。
なぜなら、「個人の悲劇がどれほど壮絶でも、システム(社会構造)は変わらない」という冷徹な現実を突きつけるためです。
ハーヴェイは単なる一人の悪役ではなく、「家父長制」や「ルッキズム社会」そのものの象徴として描かれています。
エリザベスが自滅して消えても、ハーヴェイのような男は痛くも痒くもありません。
彼は血を拭いて、翌日にはまた次の「若い肉(新しいスー)」を見つけて、何食わぬ顔でビジネスを続けるでしょう。
この「悪が滅びない」という救いのなさこそが、ファンタジーではない現実社会の残酷さを映し出しており、観終わった後の強烈なモヤモヤ感の正体なのだと思います。
🔵考察③:モンストロの美学と「私を見て!」の悲哀
ラストに登場したクリーチャー「モンストロ・エリザスー」。
デミ・ムーアの顔が背中に埋まり、手足がねじれ、複数の乳房を持つその姿は、映画『エレファント・マン』やフランシス・ベーコンの絵画を思わせる、生理的嫌悪の極みのような造形でした。
しかし、彼女が不器用な手つきでドレスを着て、崩れた唇に口紅を塗り、ステージに立つ姿を見たとき、僕は少しだけ「崇高さ」を感じてしまったんです。
彼女は怪物になってもなお、「愛されたい」「私を見て」と叫んでいました。
それは滑稽かもしれませんが、人間の根源的な欲求そのものです。
これまでは「若さ」や「美しさ」という仮面を被らなければステージに立てなかった彼女が、全ての仮面が剥がれ落ちた一番醜い姿で、初めて世界と対峙した。
最後に大量の血をぶちまけたのは、これまで社会や男性の視線に抑圧され、溜め込んできた彼女の内側にあるもの(痛み、怒り、そして生命力)を、全てさらけ出した「解放」の瞬間だったのかもしれません。
あの血の洪水は、単なるスプラッターではなく、彼女の魂の叫びそのものだったのです。
🔵考察④:鏡と幻覚の謎〜悪夢は終わらない〜
細かい部分ですが、気になった方はいませんか?
物語の終盤、エリザベスとスーがバスルームで殺し合いをした時、鏡は激しく叩きつけられて粉々に割れましたよね。
でも、その直後にスーが活性化剤を打つシーンでは、鏡が何事もなかったかのように綺麗に元通りになっていたんです。
これは単なる撮影ミス(コンティニュイティのエラー)でしょうか?
いいえ、これほど計算された映画でそれはないでしょう。
一つの解釈として、後半の展開(モンストロ化以降)は、死にゆくエリザベス(あるいはスー)が見た「走馬灯のような幻覚」だったのではないか、という説があります(映画『ジェイコブス・ラダー』のように)。
もしそうなら、最後の星への帰還も、彼女の願望が見せた悲しい夢だったことになります。
でも僕は、この映画がおとぎ話(ダーク・フェアリーテール)の構造を持っていることを考えると、論理的な整合性よりも「悪夢は終わらない」という演出意図だったのかなと思います。
割れても割れても、また「美しさ」を求めて鏡の前に立ってしまう。
何度失敗しても、また完璧な自分を求めてしまう。
そんな、逃れられない女性の悲しい業と、無限に続く地獄のループを、あの復活した鏡は暗示しているのかもしれません。
🔵考察⑤:部屋番号「503」と「207」に隠された意味
エリザベスがサブスタンスを受け取るために指定されたロッカーの番号、覚えていますか?
「503」でした。
ネット上では、これはインターネット用語のHTTPステータスコード「503 Service Unavailable(サービス利用不可)」を暗示しているのではないかと噂されています。
つまり、彼女の肉体は、薬を使った時点ですでに「機能停止」することが運命づけられていた……なんて深読みするとゾッとしますね。
あるいは、彼女が社会から「利用価値なし」と判定されたことのメタファーかもしれません。
また、もう一つのロッカー「207」を使っていたと思われる老いた男性(元・美貌の看護師)の存在も気になります。
人間の骨の数は、成人では通常約206本と言われています。
「207」という数字は、人間としての定義を一つだけ超えてしまった存在、あるいは身体に「余計なもの(異物)」を取り込んでしまった状態を意味しているのかもしれません。
数字一つにも不穏な意味を持たせる、コラリー・ファルジャ監督のこだわりを感じます。
🔵考察⑥:「エビ」と「手羽先」が表す捕食関係
この映画、とにかく「食事シーン」が汚いし、音がデカい!
ハーヴェイがエビをバリバリと殻ごと食べるシーン、本当に生理的に無理でしたよね(褒め言葉)。
でもあれは、単なるマナー違反を描いているのではありません。
「男が女を消費(捕食)する」という残酷な力関係のメタファーなんです。
エビの殻を剥くように女性の服を脱がせ、中身(若さ)だけを貪り食って、殻(老いた肉体)は捨てる。
ハーヴェイの食事は、そのまま彼が女性に対して行っている行為そのものです。
一方で、スーもまたチキン(手羽先)を貪り食うシーンがありました。
これは、スーがオリジナルであるエリザベスの肉体(生命力)を貪っていることの暗示です。
「食べる者」と「食べられる者」。
この映画における食事シーンは、栄養補給ではなく、他者から生命を奪う「残酷な搾取」の象徴として描かれているんです。
だからこそ、あんなにも不快で、暴力的な音が強調されているわけです。
🔵考察⑦:なぜ「黄色」のコートなのか?
エリザベスが最初から最後まで着ていた、あの鮮やかな黄色のコート。
映画『キル・ビル』やホラー映画の定番カラーですが、黄色は一般的に「注意」「警告」「狂気」を表す色でもあります。
また、自然界において黄色と黒の配色は「警戒色(毒を持っている生物の色)」です。
彼女自身が、社会にとっての「異物」あるいは「危険信号」であることを視覚的に表現していたのかもしれません。
また、映画全体を通して、無機質で清潔な「白(バスルーム)」、生命力と暴力を象徴する「赤(血とカーペット)」、そして異物としての「黄(コート)」という3色のコントラストが徹底されています。
この原色を多用した色彩設計には、スタンリー・キューブリック監督の『シャイニング』や『2001年宇宙の旅』への強いオマージュと美学を感じずにはいられません。
ただグロいだけじゃなく、一枚の絵画として見ても美しいのが、この映画の凄いところです。
🔵考察⑧:ラストシーンの「清掃車」が意味するもの
物語の最後、ハリウッドの星の上で溶けて消滅したエリザベス(の成れの果て)を、早朝の清掃車が淡々と水で洗い流します。
このシーン、あまりにも虚しくて、美しくて、泣けてきませんか?
あれだけの惨劇が起きても、世界は何事もなかったかのように続いていく。
彼女の命も、プライドも、血の叫びも、社会にとっては単なる「道路の汚れ」に過ぎない。
この徹底した「無関心」こそが、モンスター以上に恐ろしい、この映画の真のラスボスなのかもしれません。
そして、綺麗になった星の上を、また誰かが踏みつけて歩いていく。
このラストシーンは、日本的な「諸行無常(すべては移ろい消えていく)」の美学すら感じさせます。
エリザベスは最後に星と一体化することで、皮肉にも永遠の名声(シミとしての記憶)を手に入れた……そう解釈するのは、あまりに救いがないでしょうか?
🔴『サブスタンス』【完全版】まとめ!
●ラストのシミ:エリザベスは最後に星の上で消滅し、清掃車に洗い流された(=世界の無関心)。
●YOSHIKIの結論:鏡を見るのをやめて、今の自分を愛してあげよう。
いかがでしたでしょうか?
Amazon Prime Video映画『サブスタンス』。
単なるホラーではなく、現代社会を映す「歪んだ鏡」のような作品でした。
この映画を観た後、鏡の中の自分にどんな声をかけてあげますか?
僕は……とりあえずエビ料理はしばらく遠慮しておきます(笑)。

最後まで読んでくれてありがとう!
今回の記事が、皆さんのトラウマ……じゃなくて、考察の助けになれば嬉しいです。
皆さんはモンストロをどう思いましたか?
ぜひコメント欄で教えてください!


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