『ブラック・ミラー』シーズン7 第5話「ユーロジー」ネタバレ無し感想
第5話「ユーロジー」気になる点数は?
『ブラック・ミラー』シリーズといえば、ダークで皮肉な後味の作品が多い印象ですが、この第5話「ユーロジー」は、予想を裏切る深い感動を与えてくれる、非常に心に残るエピソードでした。
シリーズの中でも特に温かみがあり、見終わった後に優しい気持ちになれる、そんな一作です。
物語の中心となるのは、「ユーロジー」と呼ばれる、写真を通じて過去の記憶を追体験できる技術。
主人公は、過去に後悔や過ちを抱えたまま、この技術を使うことになります。
自分の記憶を頼りに、かつての出来事や人間関係を再訪していく過程は、時に痛みを伴いますが、人が過去とどう向き合い、現在、そして未来へと繋げていくのかという普遍的なテーマを丁寧に描いている印象。
特に感動的だったのは、主人公が避けたい過去や自身の不完全さと向き合いながらも、少しずつ変化していく姿です。
記憶の中での出来事や、彼を導く不思議なAIガイドとの対話を通して、彼は忘れていた大切なものや、見落としていた真実に気づかされていきます。
その過程は決して平坦ではありませんが、だからこそ、彼が最後にたどり着く境地や、示す行動に胸を打たれました。
このエピソードは、テクノロジーが必ずしも人間性を脅かすだけでなく、時として僕たちが過去を受け入れ、他者との繋がりを再確認し、未来へ向かうための小さな一歩を踏み出すきっかけを与えてくれる可能性も現わしているように感じます。
切なさの中にも確かな希望の光が見える、深く、そして温かい感動を味わえる素晴らしい物語でした。
『ブラック・ミラー』シーズン7 第5話「ユーロジー」:ネタバレ感想&勝手に妄想考察

この「ユーロジー」は、『ブラック・ミラー』シリーズの中でも特に感情に訴えかける、ほろ苦くも温かい物語でした。
テクノロジーが介在することで、過去の記憶や後悔との向き合い方が、よりパーソナルで、時に残酷に、しかし最終的にはある種の救いをもたらす形で描かれていてお気に入りのエピソードになりました。
第5話「ユーロジー」:過去との対峙、そして未来への旋律
主人公フィリップが、気乗りしないまま始めた「ユーロジー」体験。
それが、単なる追悼文作成の手伝いではなく、自らの過ちと向き合い、知らなかった真実に触れ、そして会うことのなかった娘(のAI)と対話するという、彼の人生にとって極めて重要な旅になる展開は見事でした。
過去の記憶が、彼の言葉によって徐々に鮮明になっていく描写は、記憶の主観性や曖昧さを巧みに表現していると思った。
そして、AIガイドがケリーの複製だと知った時の衝撃と、その後の対話の切なさ。
フィリップが自身の嫉妬や裏切り、誤解といった「見たくない過去」から目を背けられなくなる過程は痛々しいですが、それがあったからこそ、最後のチェロ曲の発見とケリーへの提供という行動が、感動させてくれました。
言葉ではなく、音楽という形で捧げられた「ユーロジー」。
それは完全な贖罪ではないかもしれませんが、過去と未来を繋ぐ、ささやかで美しい和解の形として心に残りました。
『ブラック・ミラー』らしい皮肉(チュートリアルを飛ばしたことなど)も効かせつつ、シリーズとしては珍しく、明確な希望やカタルシスを感じさせてくれる結末だったと思います。
「ユーロジー」技術は記憶をどう扱っているのか? その信頼性と危険性は?
再現される過去は客観的な事実か、フィリップの主観か?
記憶違いや自己弁護が反映されるのでは?
●僕の考察
この技術は、利用者の「現在のフィルターを通した過去の記憶」をベースに場面を構築するのかも。
だからこそ、フィリップが語ることで詳細が「鮮明」になる。
それは必ずしも客観的な真実の再現ではなく、彼が「そう記憶している」あるいは「無意識に改変した」過去。
AIケリーという「他者の視点(あるいはキャロル側の視点の代弁者)」が介在したからこそ、フィリップは自分の記憶の歪みに気づき、隠された手紙=客観的な事実にたどり着けた。
この技術単体では、利用者は自分の都合の良い記憶の中に閉じこもってしまう危険性もはらんでいる。
真実と向き合うには、技術だけでなく、他者との対話や異なる視点が必要だということを言いたかったのかもしれない。
AIケリーの役割と、彼女の「意志」は?
なぜ彼女はフィリップを核心的な記憶(別れ、手紙)へと導いたのか?
単なるAIの機能か、何か意図があったのか?
●僕の考察
AIケリーは、単なるデジタル複製やガイドAIではなく、キャロルが生前にユーロジー社に託した「デジタル遺言」あるいは「メッセージプログラム」のような役割を担っていた可能性があるんじゃないかな。
キャロルは、自分が亡くなった後、いつかフィリップがこの技術を使うことを見越して、彼に真実(ケリーの父親のこと、自分の本当の想い)を伝えるための「仕掛け」を施していたのではないだろうか?
AIケリーの質問や行動は、フィリップが手紙を発見し、真実を知るための、キャロルによる最後の、そして間接的な対話の試みだったのかもしれません。
それは、娘ケリーの未来を思った行動でもあったのだろうなぁ。
この物語における「希望」や「救い」の本質とは?
フィリップは本当に救われたのか?
過去は変えられないのに?
●僕の考察
ここで描かれる救いは、罪の完全な消滅や過去の改変ではないと思う。
それは、「過去を受け入れ、未来への一歩を踏み出すためのきっかけ」としての救いだと思うから。
フィリップは、初めて自分の過ちと真摯に向き合い、それを認めることができた。
そして、後悔の中からキャロルの遺した美しいもの(チェロ曲)を見つけ出し、それを未来(ケリー)へと繋ぐ行動を起こした。
楽曲の提供は、完全な償いではないかもしれないけれど、断絶していた関係性を修復し、新たなスタートを切るための「架け橋」となった。
この「未来への可能性」こそが、本作の希望の本質なんだと思いたい。
【フィリップのその後を勝手に妄想考察!】

チェロの楽譜をケリーに送ったフィリップ。
彼の人生はこれからどうなるのでしょうか?
彼はすぐに現実のケリーに名乗り出ることはしないかもしれません。
彼女の人生をこれ以上混乱させたくない、という配慮から。
しかし、キャロルの遺した音楽を通じて、遠くからケリーの存在を感じ、彼女の幸せを静かに願い続けるのかもなぁ。
そして、自身の過去と向き合った経験を糧に、音楽活動を再開するかもしれませんが、それは名声のためではなく、自身の内面と対話し、静かに償いを続けるためかもしれません。
あるいは、フィリップは勇気を出して現実のケリーに連絡を取るかもしれません。
ユーロジーでの体験を告げるかどうかは別として、「君のお母さんの古い友人だ」と。
最初は戸惑い、ぎこちない関係かもしれませんが、キャロルの思い出や音楽という共通項を通じて、時間をかけて特別な絆を築いていく可能性も…?
親子ではない、けれど互いにとって無視できない存在として。
フィリップは、ユーロジー技術との出会いを通じて、記憶や過去との健全な向き合い方を学んだのかもしれません。
彼はこの経験を生かし、今度は他者の「ユーロジー」体験を手助けするような役割を担うようになったら面白い。
例えば、ユーロジー社のコンサルタントとして、あるいは自身の経験を基にしたカウンセラーとして、人々が過去のトラウマや後悔と向き合い、未来へ進むための手助けをする。
彼は音楽家としてだけでなく、「記憶の翻訳者」として、他者の心の再生に関わることで、自身の過去とも和解していく…なんて未来があったらより素敵な話になるのにな。

「ユーロジー」は、テクノロジーが人間の最もデリケートな部分である「記憶」や「感情」にどう関わっていくのかを、切なくも温かい視点で描いた作品でした。
『ブラック・ミラー』が必ずしも暗い未来ばかりを描くわけではないことを示し、観る者に深い感動と、過去との向き合い方について考えるきっかけを与えてくれるエピソードでした。
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